「ガラスの天井を打ち破れ!~女性も男性も輝く未来へ~」イベントレポート

2019年11月27日、女性活躍の推進について広く発信と提言を行うことを目的とした「女性が輝くTOKYO懇話会 ガラスの天井を打ち破れ!~女性も男性も輝く未来へ~」が、お茶の水女子大学にて開催されました。
今回の懇話会は東京都とお茶の水女子大学との共同開催となり、キャリア形成やライフ・ワーク・バランスなどについて、東京都知事の小池百合子氏、お茶の水女子大学学長の室伏きみ子氏と、社会の第一線で活躍する女性ゲストがディスカッション形式で語り合い、大学生を中心とした若い世代に向けてメッセージを発信されました。

イベント概要

日時 2019年11月27日16時40分~18時10分
場所 お茶の水女子大学 講堂(徽音堂)
定員 500名
参加費 無料

出演者

小池百合子(東京都知事)

1976年10月カイロ大学文学部社会学科卒業。1992年7月参議院議員。1993年7月衆議院議員。2003年9月環境大臣。2004年9月内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策)兼任。2007年7月防衛大臣。2016年7月東京都知事当選。

室伏きみ子(お茶の水女子大学長)

お茶の水女子大学理学部卒業、同大学院理学研究科及び東京大学大学院医学系研究科修了、医学博士。専門は細胞生物学、生化学、科学教育。お茶の水女子大学理学部長、理事・副学長を経て2015年から現職。日本学術会議会員、ルイ・パスツール大学客員教授、(株)ブリヂストン社外取締役等。

青山美奈(株式会社ブリヂストン 先進材料企画部長)

1985年お茶の水女子大学理学部化学科入学、1991年お茶の水女子大学大学院理学研究科化学専攻修士課程修了。1991年株式会社ブリヂストン入社。タイヤ材料開発部、育児休職、品質保証部、CSR・環境戦略企画推進部を経て2018年から現職。(ダイバーシティ推進ユニット主任部員を兼任)。2児の母。

柴田裕子(東海旅客鉄道株式会社 人事部勤労課担当課長)

1993年桜蔭高校卒業。1997年東京大学教育学部卒業。1997年東海旅客鉄道株式会社入社。人事部で人事運用及び人事システム構築に携わった後、名古屋セントラル病院立ち上げプロジェクト、育児休職、グループ会社人事部門でのマネージャー経験等を経て2015年から現職。2児の母。

イベントレポート


今回は働く社会人女性が特に参考となる部分を中心に、レポートをまとめさせて頂きました。

管理職として働くことについて

管理職として働くことについて、実際に管理職として働かれている青山氏、柴田氏のお考えを中心にディスカッションが行われました。

青山美奈氏
管理職になって大きく変わることは次の5つ。

  1. プレーヤーから監督になること。メンバーを動かしアウトプットを最大にすることが求められます。
  2. 人事権を持つこと。人事評価や人をアサインしなければなりません。
  3. 「ヒト・モノ・カネ」についての経営情報が入ってくるようになること。情報の取捨選択が必要になってきます。
  4. 代表者として地位となること。個人の意見ではなく、会社の意見となってきます。また相応しいふるまい・認識・意見などが求められるようになってきます。
  5. 今まで以上のメンタルが必要となること。「勇気」「自信」「覚悟」が必要になります。

柴田裕子氏
私は次の3つの事を心がけています。

  1. 明るく、前向きでいること
  2. 言語化して指示できることは、部下にやってもらうようにしていること
  3. 夢と勇気を持つこと。夢はみんなで共有できるミッション、勇気は勇気を持って外部を説得すること

また管理職になって思うことは、会社は管理職の価値観の集合体である、ということだと感じました。

ライフ・ワークの両立について

続いて、多くの女性が悩む問題である「ライフ・ワークバランス」について、青山氏、柴田氏のこれまでのご経験談を中心にディスカッションが行われました。

青山美奈氏
子どもを出産すると時間的制約がどうしてもあるため、自分を高め生産性を上げたり、優先順位を決める事が必要となってきます。
優先順位の例では、離乳食はレトルトにしたり、様々な外部サポートを使ったりしてきました。
また、夫と妻は子どもに対して平等である必要があると思っています。夫は妻のサポート役ではなく、育児は二人で平等に行う必要性があると思います。
また社内の制度を変えて、自分が仕事と家庭との両立をやって見せることで、女性でもキャリアを断念せずに働けるということを広めることができると思っています。

柴田裕子氏
私が行ったことは、優先順位を決めて、意識転換をしたことです。
育休後は、それ以前の仕事のやり方の残像にとても悩まされていましたが、仕事を辞めないことが自分にも会社にも良いことだと思い、仕事を続けてきました。
子育ては人生にとってプラスであり、学びに繋がります。そして、それが仕事にも役立っています。

女性が活躍できる職場を作るためには

日本では、まだまだ男性役員が中心の組織構成の企業が多く、女性が働きやすい職場環境とは言えない状況にある企業も多く存在しています。青山氏、柴田氏はどのようにして、女性が活躍できる職場作りを行ってきたのか、お二人のご経験談を中心にディスカッションが行われました。

青山美奈氏
男性はなかなか女性の困りごとを理解できません。困りごとを「苦言」として発していても、誰も聞く耳を持ってはくれませんでした。
このため私は、「こういう風にしたらどうでしょうか?」という提案に変えて、上司や周囲の同僚に発信をしました。困っていることを提案に変える、そして発信し続ける、これが大事だと思います。

柴田裕子氏
男性の管理職は、女性の悩みに気づいてすらいないことが多いです。例えば私のケースですと「小1の壁」という言葉すら男性管理職は知りませんでした。このため、「自分はこういうことで悩んでいる」と直接上司に話に行くなど、悩みの共有をすることが大切だと思います。そして女性が働く上で「このような制度が必要です」と訴える必要があると思います。

室伏きみ子学長
お二人の話を聞いていて、女性ご自身と会社との信頼関係も大切だと感じました。まず会社がお二人のことを信用していますよね。信頼関係があれば、会社も状況を理解し、何とかしようと動いてくれたのではないでしょうか。

ガラスの天井はどうやって打ち破るか?

今回の懇話会のテーマである「ガラスの天井」とは、女性活躍を阻害する見えない障壁のことを言います。
小池都知事、室伏学長中心に「ガラスの天井」について、ご自身のお考えを述べられました。

小池百合子都知事
意思決定の場に女性がいることが大切だと思います。
「ガラスの天井」ありきではなく、ないことと考えていきましょう。何でもやってみて、天井にぶち当たったら別の方法を考え、打ち破りに行きましょう。私がやらなきゃ誰がやる、と考えていくことが大切ではないでしょうか。

室伏きみ子学長
個人だけではどうしようもないこともありますが、声を上げれば周囲が気付いてくれます。
私自身は「ガラスの天井」を感じたことはありませんが、女性が本当の意味で評価されていないと感じています。
無意識の偏見というのがあると感じており、男性も「男たるもの」「家族を養わなければ」ということに縛られ、暮らしにくいのではないかと感じます。男性がこのように思うことは「ガラスの地下室」と言うそうです。
今後は、男女ともに信頼・尊重して分かりあうことが大切だと思います。

最後に出演者からのコメント

柴田裕子氏
女性が指導者になるというのは、女性が社会で働きやすくなるためにとても重要なことだと思っています。女性のみなさんとこれからも頑張っていきたいと思っています。

青山美奈氏
皆さんには、自分の向上を常に考えて欲しいと思います。過去からの女性活躍を次につなぎ、最終的には「かつて女性活躍という言葉があったね」という社会になるのが私の夢ですね。

室伏きみ子学長
思うようにいかなくて妥協しなければならなくても、自分の理想とすることを諦めたり辞めたりすることはしないで頂きたいと思います。失敗や挫折を経験しても、きっと取り返しがつきます。きっと理想は叶うんだと、初心を忘れずにチャレンジして強くなって頂きたいと思います。

小池百合子都知事
ここから、1つでも2つでもヒントを見出して欲しいと思います。また一日一日を大切に「ガラスの天井」なんて言っていないで、どんどん挑戦し続けていってもらいたいです。継続していくと、おのずと道が開けると信じてやっていくことが大切だと思います。
女性が輝いてこそ日本・東京都が輝くと信じて私は活動しています。皆さんの自己実現が叶う社会を作っていきたいと思っています。

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