近年、社会人の「学び直し」が注目を集めています。
政府も積極的に社会人の学び直しを推進しようとしており、2017年の閣議決定で、2022年までに社会人の大学や専門学校等の社会人受講者数を100万人にする目標も掲げられており、国として、社会人の学び直しに力を入れていく方針を表明しています。
(参考資料:未来投資戦略2017)
しかし、国も積極的に推進する社会人の学び直しですが、私たち社会人の中では、なかなか浸透していませんよね?
それは何故なのでしょうか?
- 仕事が忙しくて、そんな時間なんて取れない…
- 会社の評価が期待できないのに、お金も時間もかけてまでやる必要がある?
- 今の仕事で、特にこれ以上のスキルや知識はそもそもいらない
- もういい歳だから、今から勉強したって遅いと思う…
人それぞれではありますが、あなたは「学び直し」に対し、上記のような考えをお持ちではないでしょうか?
確かに上記の考えは、「ごもっとも」なものです。
学び直しをすると言っても、お金も時間もかかる事なので、今抱えている仕事や会社のこと、年齢などと比較すると、どうしても「学び直しをしよう!」とアクションを起こす人が少ないのが現状だと思います。
しかし、本当にこれらの理由で、「学び直しをしない」という選択肢でいいのでしょうか?
そもそも、政府が国をあげて積極的に社会人の学び直しを推進する理由は何なのでしょうか?
そこで今回は「社会人の学び直し」が、なぜ今注目されているのか、分かりやすく説明をしたいと思います。
テキストの説明のほか図解付きのページも作成しました!
目次
超高齢化社会が、私たちの働き方を変える
今、日本は超高齢化社会を迎えています。なぜ学び直しのコラムなのに、超高齢化社会の話をまず初めにするかというと、実は「学び直し」と「超高齢化社会」には密接な関係性があるからです。
70年の間に、平均寿命は20年以上も上がっている!?
まずは平均寿命の推移について確認してみましょう。下記の表をご覧ください。
(参考:厚生労働省「平成29年簡易生命表の概況」)
和暦 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
昭和22年 | 50.06歳 | 53.96歳 |
昭和25〜27年 | 59.57歳 | 62.97歳 |
昭和30年 | 63.60歳 | 67.75歳 |
昭和40年 | 67.74歳 | 72.92歳 |
昭和50年 | 71.73歳 | 76.89歳 |
昭和60年 | 74.78歳 | 80.48歳 |
平成2年 | 75.92歳 | 81.90歳 |
平成12年 | 77.72歳 | 84.60歳 |
平成22年 | 79.55歳 | 86.30歳 |
平成29年 | 81.09歳 | 87.26歳 |
今から約70年前、団塊世代と呼ばれる人たちが生まれたのが、昭和25年~27年(1950年頃)です。日本でベビーブームが起こり、現在の日本の人口分布図でも一番ボリュームのある世代の方々が出生した時、日本の平均寿命は、男女ともに約60歳でした。
しかし、2017年(平成29年)の日本人の平均寿命は男性81.09歳、女性は87.26歳で過去最高を更新。
なんとこの70年の間に、日本の平均寿命は20年以上もあがったことになります。
正確な数字で言えば、この70年もの間に、男性では21.52歳、女性では24.29歳も平均寿命が延びました。
ここで考えなければいけないのは、あなたは祖父母や両親よりも、更に長い人生を送る可能性が非常に高いということです。
つまり、それが何を意味するかと言うと、祖父母や両親と同じような人生を送ることが出来ないということです。
寿命が延びた分、その長くなった人生をどう送れば良いのか、あなたは考えたことがあるでしょうか?
人生100年時代とも言われるようになった現代の日本社会。今後の日本では、100歳以上まで生きることが「普通」となる時代が訪れようとしています。そして、この長寿化の影響は、あらゆるものに影響を与え始めています。
ワークスタイルの変化
まず、長寿化の影響を一番に受けるものと言えば、「働き方」が挙げられるでしょう。
これまでとは違い、どのように働き方が変化するのか、ご説明いたします。
70代、80代まで働き続ける未来が到来
今までのオーソドックスな働き方の例としては、20代で就職し、60代で仕事を引退する、というのが一般的でした。
戦後の高度成長期にも重なり、給与は右肩上がりに推移、また企業の多くが終身雇用制度であったため、主に男性が外でバリバリ働き、女性は家事や子育てに専念する家庭がほとんどでした。
60代で仕事を引退し、引退後5年~10年余暇を楽しんだ後、寿命が来て亡くなる…
今から70年以上前に出生された方々は、このような人生を送られた方が多いのではないかと推測できます。
あなたの親族や知り合いにも、このような人生を送られた方は少なからずいらっしゃるのではないでしょうか?
しかし、現状はどうでしょうか?
平均寿命は大幅に上がり、60代で仕事を引退したとしても、そこから約20年以上、30年以上も生きなければなりません。生きていく以上、一番の悩みは「お金」の問題です。
頼みの綱である年金も、少子高齢化社会、今後どうなるのか不安を煽るニュースばかりですよね。年金受給年齢の引き上げは確実でしょうし、支給額も今後どのようになるのか…
もうお分かりかと思いますが、あなたの祖父母や両親が60代で引退し、貯金と年金でやりくりしていたからと言って、あなたも同じような生活を送れるとは限りません。長く生きる分、「お金」の問題がついてまわることからは逃げられないからです。
このように、「60代で引退」という、今までの概念自体が最近では変わってきています。
身体が動くうちは、働いて収入を得る。このように考えを改めている人は大変多くなってきました。
仮に100歳まで生きるのなら、80歳で仕事を引退しても、まだ20年も生きることになります。今後の未来では、70代、80代まで働くというのが当たり前となる社会になることでしょう。
終身雇用と年功序列制度の崩壊
一昔前までは、日本の社会では終身雇用と年功序列制度が当たり前でしたが、現在では、新卒で入社したとしても、入社した企業が定年まで存続するとは限らず、また評価も年齢問わず、実力主義へと変わってきました。
これまでの働き方は、高校や大学を卒業し企業へ就職後(いわゆる新卒一括採用)、同時期に入社した同期社員たちと共に、その企業で教育や研修を受ける、言わば会社が社員一人一人を育てていくのが当たり前でした。
しかし政府が発表した資料によると、1990年代以降、企業は社員への教育費を減少する傾向にあります。これが何を意味するかというと、仕事に必要な学びのために、企業は投資してくれなくなったということです。
終身雇用と年功序列制度が崩壊し、実力主義の社会となった今、十分なスキルや知識がなく、仕事の成果が上げられない場合、企業はあなたのことを平気で切り捨てていくようになるでしょう。
スキルや知識の価値がすぐに変わる時代に
みなさんもご存知の通り、現代のテクノロジーの進化・発展はとても目まぐるしいものになっています。
そしてこのテクノロジーの進化・発展が、現在の労働市場を大きく揺さぶり、今までの生活や働き方さえも、大きく変えようとしています。
例えば簡単な例として、インターネットの普及を考えてみてください。
インターネットが普及していなかった今から30年以上前の生活や働き方と、現在の生活や働き方を比べてみてください。
インターネットの普及により、それに伴って出てきたものはパソコンです。現在多くの企業ではパソコンを使って仕事をしますよね?昔にはなかった新しい技術が働き方を変えた代表的な例と言えるでしょう。
パソコンが普及する前は、計算は人が直接行っていたわけですから、そろばんや電卓の操作が速く、かつ正確に計算できるスキルを持つ人に価値がありました。しかし、パソコンが普及した今では、エクセルの表計算ソフトを正しく使える人の方が市場価値としては高くなっています。
このように、テクノロジーの進化とともに、求められるスキルや価値というのが、瞬く間に変わる時代になったのです。
時代に合わせた知識やスキルを学ぶことは、仕事の生産性を高めるのはもちろん、あなたの収入を上げるのに、大きく役立つ要素です。10代~20代の頃に学んだ知識やスキルだけでは、時代遅れなのです。
今後は人工知能(AI)に仕事が奪われるのでは…と不安の声もあがっていますが、確実にそのような未来が来るということを、今から自覚しましょう。そして、その不安があるのであれば、仕事を奪われないために、行動することが必要です。
労働市場が急速に変化する…だから今「学び直し」が重要!
前述の通り日本は今、超高齢化社会を迎え、それに伴い、これまで当たり前とされていた働き方が通用しない時代となってきました。
時代の変化は確実に迫ってきています。目を背け準備を怠った人には、今後の超高齢化社会は、とても生きづらいものとなってしまうでしょう。
そうならないためにも、時代の変化を知り、きちんと準備をする必要があります。
だからこそ、今、「学び直し」がとても重要視されているのです。
とはいえ、
- 何を勉強すればいいのか分からない…
- テクノロジーとか今まで無縁だったからよく分からない…
- 歳が歳だし、今更勉強したって遅いんじゃ…
このように思う方も多いかもしれません。
しかし、このように悲観してばかりで行動しないままでは、状況は何も変わらず、スキルや知識はどんどん古びていくだけです。
機械(AI)に仕事を奪われない分野のスキルを学ぼう
今後、新しく学び直しをしたいと思われるのであれば、ぜひ機械(AI)に仕事を奪われない分野のスキルや知識を学びましょう。
機械(AI)が得意とする分野は、いわゆる定型的な業務(ルーティン業務)です。
定型的な仕事とは、言い換えると、仕事のやり方をマニュアル化できる業務ということになります。
ほとんど日々の業務内容に変化がないような仕事、例えば一般事務、経理事務、営業事務、または銀行の窓口業務など、これらの仕事は、将来仕事のやり方をプログラムしたコンピュータが登場し、今のポジションにいる人々の業務を奪うのではないかと言われています。
では、機械に奪われない分野とは何なのでしょうか?それは、
- クリエイティブ(創造力)
- リーダーシップ
- 共感(相手の気持ちを理解する)
という、人間にしかできない分野であると言われています。
クリエイティブ(創造力)
上述したように、機械(AI)が得意な分野は、プログラム化できる仕事、つまりマニュアル化ができる業務です。
しかし現時点では、機械(AI)自体がマニュアルを考えることはできません。
つまり、ゼロからイチを作り出すような、画期的なアイデアやイノベーションの創出であったり、今までにない非常に困難なトラブルに見舞われた際の解決力などは、機械(AI)には作り出すことはできません。
リーダーシップ
リーダーシップとは、優れたビジョンを掲げ、卓越したコミニュケーション能力で、組織をまとめ導いていくことを言います。
このスキルは、機械化がどんどん進んでいくこの時代だからこそ、求められるものではないかと思います。
ロボットが人間のリーダーとなり、皆をまとめ導いていくという未来は、まだ当分来ることはないでしょう。
共感(相手の気持ちを理解する)
人の気持ちを理解し、共感する仕事も機械(AI)には出来ないと言われています。つまり、人間のふれあいや高度な伝達が重要になる仕事は機械やロボットに置き変わりにくいということです。
例えば、学校の先生や心理カウンセラー、医者、高級ホテル、レストランのスタッフ等が挙げられるでしょう。
ロボットがいまの人間と同じように、相手の気持ちを理解し共感するというスキルになるには、まだまだ当分先の話になりそうです。
何歳からでも学び直しはできる
「もういい歳だから、私には学び直しなんて無理…」と思われている方は、今から考え方を変えてみましょう。
あなたは「1万時間の法則」という言葉を知っているでしょうか?
これは人が何かを習熟するのにかかる時間と言われており、何かを新しいことを身に付けるには、1万時間はかかる、というものです。
では、残りのあなたの人生を時間で表すとしたら、どうなるでしょうか?
- 1日24時間×365日=1年間は8760時間。
- あと30年は生きられると思うなら、262,800時間
- あと40年は生きられると思うなら、350,400時間
- あと50年は生きられると思うなら、438,000時間
もうお分かりかと思いますが、あなたの残りの人生、十分、たっぷりな時間があるのです。
1万時間で新しいことを身につけられるかが不安、ということなら、倍の時間かけてもいいでしょう。それだけ時間はたっぷりとあるということです。
年齢をネックに、学び直しを諦めるという選択肢は、非常にもったいないです。
これからもどんどん時代が変わっていき、あなたが立ち止まってしまえば、あなたの未来の選択肢はどんどんと狭まるばかり。
どうせ70代、80代まで働かないといけないリスクがあるのなら、ギリギリになって慌てるのではなく、今から準備をしておくことが大切ではないでしょうか?
返済義務のない給付金制度も整う
また冒頭でも述べましたが、現在日本では、政府が国をあげて、社会人の学び直しを推進しています。
政府は社会人の学び直しを普及させるべく、返済義務のない「教育訓練給付金制度」というものを作り、プログラムによっては、受講料の最大70%が支給されるという、大変画期的な制度です。
教育訓練給付金制度については、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
このような国からの給付金なども賢く活用し、新しい知識やスキルをどんどんと習得していきましょう。
まとめ
超高齢化社会の到来により、私たちは、祖父母や両親たちの歩んできた人生とは違い、新しい人生、新しい働き方で生きていかなければならなくなりました。
労働市場が急速に変化する中、70代、80代まで働くようになれば、いまの手持ちの知識に磨きをかけるだけでは、最後まで仕事の生産性を保つことはできません。このため、時間を取り、学び直しとスキルの再習得にお金や時間を投資する必要性があるのです。
政府も国をあげて、積極的に社会人の学び直しを推進しているため、今後ますます多くの大学や専門学校等で、社会人の学び直しプログラムが整っていくことでしょう。
時代に取り残され、高齢化社会を恨むよりは、いまから出来ることを、あなたも始めてみませんか?
積極的に学び直しを行い、新たな知識とスキルを手に入れていきましょう!
この記事を書いた人 Kanako 大手企業からベンチャー企業まで3社を経験。退職を機に明治大学のスマートキャリアプログラムを受講し、学び直しの重要性を体感。その後、当サイトの企画・運営に携わる。 |