女性の活躍を応援する「京都ウィメンズベース」とは?担当者にインタビュー

京都では、行政と経済団体等による女性活躍推進組織「輝く女性応援京都会議」を設置し、「京都女性活躍応援計画」が策定されています。この計画に掲げる取組を短期集中的に実施するため、平成28年8月より女性活躍支援拠点「京都ウィメンズベース」を開設されています。

そこで今回は、京都府行政と経済団体が連携した「京都ウィメンズベース」について、どのような事業活動がされているのか、女性の活躍をどのように応援されているのか、また大学との連携による、社会人のリカレント教育(学び直し講座)開設の取り組みなどについて、京都ウィメンズベース 女性活躍推進担当課長である西村美紀さんにお話しをお伺いしました。(取材日:2019年4月18日)

京都ウィメンズベースとは?(事業内容や活動内容)

京都ウィメンズベースは、京都における女性の活躍を推進されるために設立された機関ということですが、まず具体的な事業内容や活動内容をお伺いできますか?

京都ウィメンズベース 西村美紀

西村さん
京都ウィメンズベースは、主に経済界・企業における女性活躍を推進していくことを大きなテーマとして掲げ設立された機関で、京都府だけでなく、京都市と京都労働局、京都商工会議所、また京都商工会議所以外の経済団体など現在22団体に参画いただいています。
具体的な事業内容としては大きく分けて4つあり、企業訪問による「女性活躍推進法」に基づく一般事業主行動計画の策定支援、人材育成に関する研修、働き方改革を実現するためのワーク・ライフ・バランスの取り組み支援、多様な働き方の一つである女性起業家支援、この4つを柱として活動を行っております。

京都ウィメンズベースが活動を開始されたのはいつからですか?

京都ウィメンズベース 西村美紀

西村さん
元々は平成27年3月に、経済団体等と行政(京都府・京都市・京都労働局)による女性活躍推進組織「輝く女性応援京都会議」が発足し、女性活躍を推進するための4つの行動宣言(①企業の自主的な行動計画の策定、②人材の能力開発や登用の推進、③働き方改革の推進、④起業・創業の推進)を行いました。その行動宣言に基づき、平成28年3月に「京都女性活躍応援計画」を策定しました。
さらに、これらの取り組みを短期集中的に行うため、平成28年8月に京都ウィメンズベースを設置し、先ほどお話した事業活動を行っています。

ホームページを拝見させていただきましたが、京都ウィメンズベースでは様々なイベントやセミナーも開催されているんですよね?

京都ウィメンズベース 西村美紀

西村さん
はい。京都ウィメンズベースでは「経営者・経営層」「管理職」「管理職予備層」「女性社員」「就職希望者」「学生」等、対象者別に女性活躍推進のための研修やセミナー、イベントを行っております。一部企業向けに行っているものもありますが、個人向けのセミナーもありますので、気になるセミナーやイベントがありましたら、是非ご参加ください。

大学連携京都府リカレントプログラムについて

京都府は平成30年度(2018年)より、大学と連携したリカレントプログラム事業(社会人向けの学び直し講座)の取り組みを立ち上げられておりますが、立ち上げの経緯や、リカレントプログラム事業の詳細をお伺いできますか?

京都ウィメンズベース 西村美紀

西村さん
京都府では結婚された女性のうち、働いている女性の数というのが全国平均よりも少ない傾向にあります。京都は全国で2番目に大学進学率が高い都道府県にも関わらず、結婚し働いている女性の数は全国平均よりも低い状況です。
能力があるにも関わらずライフイベント等により就業継続を一旦断念した女性を、リカレント教育によって社会でもう一度自分の希望する働き方ができる環境を整備しようと、京都府と大学、就業支援の受託・運営を行う民間企業が連携し、「大学連携京都府リカレントプログラム」を開講しました。

それなりに今までキャリアを形成されてきた女性の場合、再就職にあたって、正社員でしっかり働いていきたいという希望を持たれている方も多いのですが、自分の適性を踏まえた仕事をどういうルートで探して良いのか分からず、再就職をすること自体が難しい状況にあると思います。

自分の適性に合った仕事を自分自身で見つけるというのは、確かにどのようなルートで探したらいいのか分からない方も多いと思いますし、そもそも自分の適性自体が分からない人もいるのではと感じます。

京都ウィメンズベース 西村美紀

西村さん
このような問題認識があったこともあり、ブランク期間を乗り越えて仕事復帰を目指す女性たちに、「学び・キャリア形成・再就職への支援」をトータルでサポートをする、「大学連携京都府リカレントプログラム」を立ち上げました。
2018年度は、京都府、京都女子大学、オムロンエキスパートリンク社(受託・運営)が連携し、受講生20名中、17名もの方が再就職されました。この結果や受講生のアンケート等からも、求められていた支援だと感じています。

仕事復帰に必要なビジネススキルや、手厚い再就職支援を受けられるというのは、まさに仕事復帰を目指される方には最適なプログラムですね。リカレント教育を受けられた女性に対し、企業側の反応はどうですか?

京都ウィメンズベース 西村美紀

西村さん
まだまだ企業側には「リカレント教育」自体が浸透していないという現実がありますが、プログラムの内容自体は企業が求めている人物像として、とても良いという評価をいただいています。まずは企業側に、学び直してしっかり働ける女性がいるということを理解していただく必要性を感じています。

西村さんの視点より、リカレント教育を受けられる女性というのはどういう方が多いと感じるのか、またリカレント教育を受けられた女性に今後どのように活躍して欲しいか、お考えをお伺いできますか?

京都ウィメンズベース 西村美紀

西村さん
大学連携京都府リカレントプログラムは、2018年度から始まったばかりです。初年度に受講をされた1期生は、まだ何も実績がないプログラムに申し込みをされたことから、きっと「学ぶ」ということと「働く」ということに対しての意識が高い方が多いのだろうと思っていましたが、実際そのとおりだったと大学から報告を受けています。講義で積極的に質問されたり、最低限の科目履修ではなく、できる限り多くの科目を履修されるなど、学びに対して貪欲な方が多かったです。
在職時に培われたスキルや子育ての経験などに加えて、リカレント教育により学び直された知識等により、社会で再び能力を発揮していただきたいと考えています。

今後の女性のキャリアデザインについて

今後の女性のキャリアデザインについて、お伺いいたします。京都ウィメンズベースでは、女性の企業での活躍を応援されているということですが、今感じている女性活躍に関する課題についてお伺いできますか?

京都ウィメンズベース 西村美紀

西村さん
中小企業においては、女性社員のロールモデルのいない会社が多いということが課題だと考えています。
従業員100人規模以上の会社になると、一定数ロールモデルとなる女性社員がいるのですが、100人以下の規模の会社になると、ロールモデルとなるような女性社員がほとんどいません。京都では圧倒的に100人以下の企業が多く、これらの中小企業において女性活躍が進まないと、社会全体として女性活躍が進んだとは言えないと思います。
京都ウィメンズベースでは、中小企業を対象として、今は努力義務である女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画の策定支援をしており、いかに女性活躍の裾野を広げていくかという取り組みを行っていますが、実際の取組はなかなか困難なようです。企業規模にもよりますが、中小企業は従業員数が少なく、一人の社員に業務が複層的に重なるため、計画策定や取組に割く人的・時間的な余裕がない状態です。さらには、粘土層と言われる昭和の働き方を良しとする経営者や上司が多いことが女性が活躍できない要因に大きく関係していると感じます。

圧倒的に多い中小企業において、このような意識改革をしていかないと、女性が働きやすく活躍できる社会を実現することは難しいのかもしれないですね。

京都ウィメンズベース 西村美紀

西村さん
2019年度から施行されている「働き方改革関連法」により労働時間の上限が設定されるなど、働きやすい職場にしていく必要があるということは、中小企業も含めて認識されているかと思います。
生産年齢人口が減少する中、働きやすい職場でなければ人材確保や生産性の向上は困難です。また「女性活躍」と言うと、中小企業で女性が少ない職場の場合、当事者としてご理解いただくのはなかなか難しいのですが、「ワークライフバランス」という切り口でお話しさせていただくと聞いていただけることがあります。そこから徐々に女性活躍についても、ご理解いただけるのではないかと考えています。

ひとつご質問なのですが、京都ウィメンズベースで言う「女性活躍」というのはどういった女性像のことを指すのでしょうか?

京都ウィメンズベース 西村美紀

西村さん
京都ウィメンズベースでは、女性活躍推進法に基づき、主に中小企業において女性が活躍できる環境整備等を支援しているところですが、今後、育児や介護等により時間的制約のある人が一層増えることが予測されますが、そのような中にあっても、自分の希望に応じた生き方、働き方が実現できること、自分なりの活躍の形が叶うことだと考えています。
しかしながら男女雇用機会均等法の成立から34年が経過した現在においても働く場における女性の活躍は道半ばであることから、京都ウィメンズベースにおいて、女性活躍推進法に基づきワークライフバランスの実現や働きやすい職場環境づくりによる女性の活躍を推進しているところです。

仕事で活躍できる女性がどんどん増えていくといいですね。今後女性のキャリアデザインを考える上では、企業・個人ともに、どちらも意識を変えていく必要があると思いますが、具体的にはどういった意識を持つ必要があるのでしょうか?

京都ウィメンズベース 西村美紀

西村さん
企業・個人ともに、社会に貢献しながら自分の暮らしも豊かにするということを考えていく必要があると思います。自分ばかりでなく、個々の多様性を尊重しながら、自分が会社に貢献できるか、社会に貢献できるか、地域に貢献できるか、誰もがそういう幅広い視点で考えるようにならないといけないのではと思います。また企業も目の前の利益だけではなくて、長期的にどのようにしていくことが、企業だけではなく社会全体のために良いのか、社員の活躍推進も含めて考えていただき活動して行く、このような意識を持つことが必要なのではと思います。

読者へのメッセージ

最後になりますが、このインタビュー記事を読まれている読者の方へ、メッセージをお願い致します。

京都ウィメンズベース 西村美紀

西村さん
京都ウィメンズベースは、企業における女性の活躍を応援するべく開設されました。お困りのことや、ご意見があれば、是非ご相談いただきたいと思います。皆さまからいただいたご意見が施策につながりますので、まず皆さんの想いをお伝えいただき、一緒に前に進んでいけたらなと思っています。

またインタビューの中でもお話させていただきましたが、京都ウィメンズベースでは、様々な研修やセミナーも開催しています。気になるセミナーがあれば、是非申込みの上、ご参加いただければと思います。

皆さんと一緒に頑張っていきたいので、どうぞよろしくお願い致します。

インタビューを終えて

今回は京都での女性活躍を応援すべく開設された、「京都ウィメンズベース」について、京都ウィメンズベース 女性活躍推進担当課長である西村美紀さんにインタビューのご協力を頂きました。

京都ウィメンズベースでは、京都での女性活躍推進拠点として、様々な取り組みを行っています。企業への女性活躍への理解を促す活動を行われていたり、大学連携京都府リカレントプログラム事業の立ち上げ、また女性活躍に関わるイベントやセミナーの開催など、京都での女性活躍を応援する機関です。

興味を持たれた方は、一度「京都ウィメンズベース」のホームページをチェックし、大学連携京都府リカレントプログラムや、各種イベントやセミナー等に参加されてみてはいかがでしょうか?

[ 京都ウィメンズベースHP ]

西村さん、インタビューへのご協力、誠にありがとうございました!

インタビュアー

Kanako

大手企業からベンチャー企業まで3社を経験。退職を機に明治大学のスマートキャリアプログラムを受講し、学び直しの重要性を体感。その後、当サイトの企画・運営に携わる。

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