関西学院大学では「ハッピーキャリアプログラム」という、社会人女性向けの学び直しビジネスプログラムを開講されています。
今回は、当プログラムの立ち上げを企画された、関西学院大学専門職大学院 経営戦略研究科教授の大内章子先生に、プログラムの内容だけではなく、ハッピーキャリアプログラムの創設に至った経緯、当プログラムに込めた想いなどについて、お話をお伺いしてきました。(取材日:2019年4月17日)
関西学院大学経営戦略研究科 総合商社勤務の後、経営について学びたいという思いと企業での働き方への疑問から、退職し慶応義塾大学大学院に入学、商学研究科博士課程修了。米国ピッツバーグ大学研究員、英国ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス客員研究員、三重大学人文学部助教授を経て、現職。女性の就業継続や管理職昇進など女性のキャリア形成の研究を背景に、「ハッピーキャリアプログラム」を立ち上げ、企画運営を行っている。 |
目次
ハッピーキャリアプログラム立ち上げの経緯について
まず初めに、関西学院大学で開講されている「ハッピーキャリアプログラム」を立ち上げた経緯についてお伺いします。
当プログラムは「女性の仕事復帰・起業コース」と「女性リーダー育成コース」の2つのコースがあり、キャリアを中断されて家庭に入られた女性の仕事復帰等の支援、および管理職や役員などのリーダー職を目指される女性向けのビジネスプログラムですが、なぜこれらのプログラムを開講するようになったのか、立ち上げのきっかけや経緯を教えてください。
研究者として女性のキャリア形成について総合職90名を継続的にインタビュー調査する中で、本来であれば、男性と同じ企業の基幹的な業務を担う立場で採用された女性総合職でさえ、男性と同じような教育訓練・配置転換の機会が与えられていないということがわかりました。
同じ総合職で採用されたとしても、男性と女性とではキャリア形成の過程において違いがあるということですね。
確かにキャリア形成において「女性だから」という理由で、悔しい想いを経験した女性は多いのではないかと思います。
「もっと仕事をしたい」という気持ちがあるにも関わらず、日本の会社での人材育成では、どうしても女性はモチベーションが下がってしまいます。総合職90名の調査の中で、女性たちは離職した後でも悶々とした気持ちを抱えていることが分かりました。このような経緯もあり、まずは文科省の委託事業として3年間、仕事復帰を目指される女性向けのビジネスプログラムを開講する運びとなりました。
まずは文科省の委託事業として「ハッピーキャリアプログラム」を開講されたのですね。ですが、委託事業が終わられた後も継続しプログラムを開講され続けていますが、受講生から大きな反響があったからなのでしょうか?
「女性リーダー育成コース」については、どのようなきっかけで始まったのでしょうか?
国は女性活躍推進で待機児童の解消、女性の再就職支援、女性管理職の増加の3本柱を掲げていますが、両コースでそのうちの2つに微力ながら取り組ませていただいていると考えています。
「ハッピーキャリアプログラム」を運営されてきた中で、特に大変だったことは何でしょうか?
開講1年目は当時自分も乳幼児2人の子育て中で、文科省の委託事業に採択されてから約2か月間しか準備期間がなかったこともあり、とにかく立ち上げが大変でした。
また、4年目からは完全に独立して受講生を集客していかなければならなかったわけですが、ハローワークなどの無料で受講できる就労支援がある中、いかにお金を払ってでも学びにいきたいと思ってもらえるようなプログラムにするか、すごく頭を絞りましたね。
開講までの準備期間が約2か月間だったとは、とても短い期間で驚きました。また、他の就労支援サービスといかに差別化し集客をするか、とても悩まれたんですね。
科目・授業について(コース別の概要、担当科目、課題、難易度)
授業のことについてお伺いさせていただきたいと思います。「仕事復帰・起業コース」と「女性リーダー育成コース」は対象とされている方が全く違うと思いますが、それぞれのコースの特徴や対象者について詳細をお伺いできますか?
自分にとっての働く意味を考え、より好ましいライフキャリアをデザインする「キャリアデザイン」や、ビジネスのベース・要になる「ビジネスコミュニケーション」、仕事の成果を左右する「モチベーション&リーダーシップ」をコアな部分として必修科目にしています。
一方、「女性リーダー育成コース」は役員・管理職として職場で活躍するリーダーを養成することを目的としています。役員・管理職としてどのように意思決定していくのか、リーダーシップをどうとっていくのか、どのようにクリティカルに思考しロジカルに人に説明・説得して人を動かしていくか、などの組織マネジメントやクリティカルシンキングなどを必修科目にしています。
「女性リーダー育成コース」の内容については、男女問わずに学びたい内容だと思いますが、なぜ女性に特化したコースにしたのでしょうか?
先ほど私の研究の話をしましたが、男性であれば実際の企業の中で様々な経験を積み、修羅場の経験や失敗などもするため、自然とリーダーシップ力や意思決定力を身につけやすいのですが、女性は男性に比べ、そのような経験が少ないのが現状です。まず会社できちんと育成されていたら得られたであろう部分を、きっちり学ぶ必要があります。そういうことから女性に特化しています。
ただし、現実として女性だけのビジネスの世界はありませんから、選択科目で男性も学んでいる授業と合同にして、男性と議論を戦わせる機会を設けるなどの工夫はしています。
続いて、大内先生のご担当科目についてお伺いいたします。ご担当科目の簡単な概要や、授業の進め方などについてお伺いできますか?
- モチベーション&リーダーシップ(仕事復帰・起業コース 必修科目)
- 組織マネジメントⅡ(女性リーダー育成コース 必修科目)
- 人的資源とキャリア開発(両コース 選択科目)
『モチベーション&リーダーシップ』という科目は、どのように自分のモチベーションをマネジメントしていくのか、関わる人々にモチベーション高く仕事をしてもらうためにリーダーシップをいかに発揮するかについて学びます。『組織マネジメントⅡ』という科目は、1ランク上のリーダー層に求められるリーダーシップ力を学ぶ内容です。『人的資源とキャリア開発』という科目は、重要な経営資源である従業員などの「人」を対象として、人事雇用管理の基本的な理論や概念を学ぶ内容です。
私の授業ではどの科目についても、主に講義(座学)は1/3くらいで、後はケースメソッド授業やグループワーク、グループ研究などで、頭と手、そして心をフル回転していただきます。
課題はどれぐらい出されるのでしょうか?
私の授業に限らず、このプログラムでは頭と手だけでなく心も動かしていただきます。それを徹底的にやるので、得るものがあるのだと思います。学校に来て、授業を聞いて終わりというわけではありません。大変ですがその代わり、やったらそれだけ返ってくるものがあります。
受講を検討されている方の中で不安に思われることの一つに、授業のレベルや難易度が自分に適しているのかという点があると思いますが、大内先生の授業については、どのようなレベル感なのでしょうか?
私たちのプログラムでは、最高の材料と最高の調理法をご提供します。そこであなたが得意な和食を極めたいのか、それとも経験のないイタリアンやフレンチに挑戦するのか、または苦手な中華料理を得意にしたいのかはあなた次第です。つまり、あなたの得意な何かを極めることもできるし、今まで経験のない分野に挑戦することもできるのです。そのどれを選択することにしても、最高の材料と調理方法はご提供しますので、それを活用して最高のお料理を作っていただけます。
お料理の例え、すごく分かりやすいですね。
ドンドンと大きく叩けば、それだけ音は返ってきます。自信なげにちょんちょんとしか叩けなければ、それしか返るものがありません。要するに、その人次第で如何様にも変わるということです。
結局は、本人のやる気次第という点が一番大きいということですね。
大内先生から見た、受講生について
「ハッピーキャリアプログラム」は半年または10か月間のプログラムですが、受講生と接していて、最初の頃と比べ成長されているな!と感じることはありますか?具体的なエピソードも含めて教えてください。
半年間のプログラム受講の中で、今までとは違ったものの見方や考え方が出来るようになるからこそ、このようなお言葉を頂けるんですね。
続いて「女性リーダー育成コース」の受講生とのエピソードもお聞かせください。
また、会社で上司や年上の部下との人間関係に苦労していた人であれば「上司を変えることはできないが自分が変わることはできるとわかりました」「異動希望を出して新しい職場で新しい仕事に挑戦しています」「思い切って転職することにしたら仕事が楽しい」など嬉しい声が聞かれます。中には「自分がここで学んだことを実践することで部下が変わっていく様子がわかって嬉しい」と言ってくれる人もいて、まさに「女性の活躍が職場を変える」ことを実践してくれています。開講当初からのコンセプト通り、やがて彼女たちの活躍が「企業を変える、社会を変える」ことになるだろうと期待しています。
プログラムの受講を通し、自信がついたり、学んだことを実践することでこれまでの悩みを解決する等、皆さん成長されているのですね。
受講生の皆さんの生き生きとしたパワーが貰えるからこそ、10年以上プログラムを続けているのです。それがなかったら続けていなかったかもしれません(笑) 修了式のあたりになると続けていて良かったと思いますし、それが励みでまた次の年に頑張れます。
女性のリカレント教育(学び直し教育)の必要性について
女性の学び直しについてお伺いしたいと思います。リカレント教育という名前の認知度も含めて、女性の学び直しというのはまだまだ一般的ではありません。女性の学び直しの必要性について、大内先生がどのようにお考えになっているかお伺いできますか?
まずはこのような現状を変えていくためにも、女性自身が学ぶ機会を持ち、自分が今まで出来なかった諦めていたことが出来るようになるということがとても重要です。研究の成果からも、女性の学び直しが必要であるということは出ていますし、人生の選択肢を広げるという意味でも必要だと思います。
受講を検討されている方へのメッセージ
仕事復帰やキャリアアップに向けて学びたいという意欲のある方や、興味はあるけど自信がなくて受講を迷われている方がこのコラムを読まれていると思います。最後に読者の方に向けて、メッセージをお願いします。
やれない理由、踏み出せない理由はいくらでもあると思います。子どもが小さいからとか、仕事で忙しいとか、夫や姑がいい顔しないとか。ですが一歩踏み出すと、今までとは違う景色が見えてきます。
このプログラムの良さは、自ら考える力を身に付けられることと、密度の濃い仲間を作れることです。このプログラムは半年または10か月という短い期間で終わりますが、自ら考える力がつけば、どこに行っても解決する力がつき、きっと一生の財産になると思います。
また自分ができなかった諦めていたことが、学び直しをすることでできるようになるということが一番の収穫にもなり、それは人生の選択肢を広げることにも繋がります。是非勇気をもって一歩踏み出し、「ハッピーキャリアプログラム」を受講して頂ければと思っております。
インタビューを終えて
今回は関西学院大学で開講されている「ハッピーキャリアプログラム」について、大内章子教授にインタビューのご協力を頂きました。
長年女性のキャリア研究をされ、女性の学び直しの必要性を実感されたこと等をきっかけに、当プログラムを立ち上げた大内先生。
もう一度社会に出て働きたいと思う主婦の方、ご自分の今後のキャリアについて悩んでいる方、今以上にスキルアップをしてリーダー職を目指されたい方は、大内先生のお言葉を信じ、勇気を持って一歩踏み出してみはいかがでしょうか?
関西学院大学「ハッピーキャリアプログラム」は、大内先生をはじめ、素晴らしい指導陣の先生方に出会えます。また職場や学生時代の仲間、子供の親同士の繋がりとも違う、同じ志を持つ仲間との出会いがきっと待っているはずです。
是非、関西学院大学のハッピーキャリアプログラムで、あなたも学び直しに挑戦してみましょう!
大内章子先生、インタビューへのご協力、誠にありがとうございました!
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インタビュアー Kanako 大手企業からベンチャー企業まで3社を経験。退職を機に明治大学のスマートキャリアプログラムを受講し、学び直しの重要性を体感。その後、当サイトの企画・運営に携わる。 |
※授業風景や受講生の写真は学校よりご提供いただきました。
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