日本女子大学では「リカレント教育課程」という、社会人女性向けの学び直しビジネスプログラムを開講されています。
今回は、日本女子大学生涯学習センター所長の坂本清恵教授と、リカレント教育課程担当課長(大学職員)の茂木知子さんに、プログラムの詳細をお伺いしてきました。
前半の本記事では、主に坂本清恵先生に、プログラムの内容だけではなく、リカレント教育課程の創設に至った経緯、当プログラムに込めた想いなどについてお話をいただいた内容を掲載いたします。(取材日:2019年6月13日)
日本女子大学 文学部日本文学科 早稲田大学文学研究科博士課程後期修了。(博士/文学)早稲田大学演劇博物館助手、埼玉女子短期大学、玉川大学を経て日本女子大学文学部教授、2016年より生涯学習センター所長に。著書に『中近世声調史の研究』(笠間書院)他、論文多数。 |
目次
リカレント教育課程立ち上げの経緯について
まず初めに、日本女子大学でリカレント教育課程を立ち上げた経緯についてお伺いします。
当プログラムは、キャリアを中断されて家庭に入られた女性の仕事復帰や、キャリアアップを目指す女性を支援するビジネスプログラムですが、なぜリカレント教育課程を開講するようになったのか、立ち上げのきっかけや経緯を教えてください。
またその当時、文部科学省の「社会人の学び直しニーズ対応教育事業委託」に応募をしまして、それに採択されたことから、日本で初めて大学で「リカレント」というプログラムをスタートしました。また2007年12月には、学校教育法の改正により「履修証明」を授与する課程の設置が認められ、2008年4月より、今のような履修証明プログラムとなっています。
社会人のリカレント教育の中でも、日本女子大学はパイオニア中のパイオニアなのですね。
私が関わるようになったのは2015年からです。リカレント教育課程の主任をやってみないか?と声がかかりまして、「それでは是非!」ということで加わりました。翌年の2016年から生涯学習センター所長になり、リカレント教育課程に携わって5年目になります。
坂本教授は2015年よりリカレント教育課程に携わられているのですね。当時はどのような状況だったのでしょうか?
当時は年2回の入学だったんですね。現在は4月入学のみですが、いつから変わったのでしょうか?
入学を年1回に変えた理由ですが、約10年リカレント教育課程を運営してきた中で、ブランクの長い女性が新たに学んで再就職するという希望者だけではなく、正規雇用の方が仕事を辞めて、キャリアアップまたはキャリアチェンジのために入学をされる方、あるいは非正規を繰り返した方が次は絶対に正規雇用に!という決断をして入学される方など、受講生のタイプがかなり変わってきたということがあります。このため、授業によってはクラス分けをする必要が出てきました。
時代の変化が、受講生にも顕著に現れたということですね。
プログラム内容や授業構成について
続いて、プログラム内容についてお伺いいたします。日本女子大学のリカレント教育課程は、1年間という受講期間となり、他大学の社会人女性向けのビジネスプログラムよりも期間設定が長いのが特徴です。なぜ、受講期間を1年間としているのでしょうか?
HPを拝見したところ、事務系の実務に直結するような授業を中心に構成されているプログラムかと思いましたが、実際は学部授業や通信教育のスクーリング科目など、幅広い分野の授業を受講できるのですね。
また現在ですと、当課程の単位には認めていませんが、東京商工会議所のより実践的なプログラムも特別な値段で受講できるようになっています。必要に応じて自分のキャリアをどうするかを考えながら履修していただけるよう、柔軟なプログラムだと言えます。
これからの自分のキャリアを考えながら、どの授業を履修するか考えていけるというのは、受講生にとってすごく良いですね。
この10年の間に内容も見直しをして、新しいマーケティングマネジメントというような授業を入れるなど、随分カリキュラムはブラッシュアップしてきています。
その他に、プログラム内容を構成する上で工夫・考慮されていることはありますか?
また、一度働き出してもすぐに離職してしまうケースがあったことから、2016年からは、後期にはキャリアカウンセラーの方に必ず入っていただくようにしています。自分が働き出したらどんなことになるのか、何をしてはいけないのかなど、グループワーク等を通じて学んでいただくようにしています。
再就職支援(キャリア支援)の手厚さの理由
再就職支援に関してですが、日本女子大学リカレント教育課程では、他の大学のリカレントプログラムに比べ、就労支援がかなり手厚い印象があります。なぜ、現在のような再就職支援を行うようになったのか、詳細を教えてください。
リカレント教育課程の開講当初から、再就職支援は手厚くされていたんですね。
また当課程は、リカレント教育を推進しているパイオニア的役割もあるということから、企業からの認知度やニーズも高まってきています。このため受講生と企業とがマッチングする率も、年々高まってきています。
坂本先生から見た受講生について
続きまして、日本女子大学リカレント教育課程を受講される受講生というのは、どのような方が多いのでしょうか?坂本先生から見た、受講生の印象や雰囲気など、お話をお聞かせ下さい。
また、受講生はこれまでのバックグラウンドが本当に様々なので、いろいろなタイプの方がいます。こういうタイプの受講生が多いとはなかなか言い難いですが、受講生同士、お互いに足を引っ張り合うことはなく、お互いに持ち上げていくような雰囲気があるのが特徴かと思います。
受講生同士が相互フォローというか、お互い助け合いながら勉強をされているというのは、通学過程ならではの良い点ですね。
1年間の受講期間を通し、どのように受講生が変化・成長をされるのか、具体的なお話を聞かせていただけますか?
1年間というプログラムは一見長いようにも思いますが、いろいろな経験や学びを通じ、今後の自己実現に繋げている方が多いのですね。
過去には、50代で修了された方で再就職も正規職で決まり、今はMBAの大学院に通われていて、次は起業しようかしら?なんて言われている方もいます。恐らく当リカレント教育課程に入らなければそのままの人生だったのかもしれませんが、新しい学びをしたことによって、それ以降の人生において、ずっと新たなことを学び続けようという意識になっていく、それが一番大きな変化じゃないでしょうか。
受講生の属性が時代の変化に合わせて変わってきたということを冒頭に伺いましたが、プログラムに求めるレベルに対してや、受講生の意識の変化など、以前と現在とで、変わったことを教えてください。
女性のリカレント教育(学び直し教育)の重要性・必要性について
女性の学び直し(リカレント教育)についてお伺いしたいと思います。まず、ブランク期間が出来てしまった女性が再就職を目指す上で、どのような意識や心持ちが大切なのか、坂本先生のお考えをお聞かせ下さい。
いわゆる主婦であった期間が長い方というのは、ママ友だったり、学校関係だったり、色々コミュニケーションを取る機会もあるので、「自分はコミュニケーションを取ることが得意だ」と思われる方も多いのですが、それがいわゆる、ビジネスで通用するコミュニケーションとは違うんだ、ということになかなか気がつけない人も多いと感じます。喋ることがコミュニケーションではありません。自分の言いたいことを伝えて、相手の言っていることもきちんと理解し、それでまた発信を返す。こうしたスキルを身に付ける必要がありますが、それができないと次のステップに入っていくのが難しいのかと思います。
自分自身を客観的に見つめ直し、自分の短所を知った上で、どのように次のステップを考えるかということが大切だということですね。
「リカレント」という言葉自体、まだ社会に広く浸透していないのが現状ですが、女性の学び直しの必要性や、学び直しをすべき理由について、坂本先生のお考えをお聞かせください。
また人生100年と長いですので、「人生を豊かにしていくために学びたい!」と言っていただきたいなと思います。生涯学び続けるというのは女性だけに限らず、皆さんにとって必要なことだろうなと思っています。
社会人の「学び直し(リカレント教育)」が当たり前だと思われるような社会になるためには、どのようなことが必要でしょうか?
ただ若い世代を中心に、自分に足りないことを、時間を見つけて自ら学んでいくということは徐々に広がっていると思います。企業から提供される段階別の研修を待っているだけでは補完しきれないため、自分に足りないものは何か自覚するようになってきたのかなという感じはしますね。また、最近では大学院に進学する社会人の割合も増えてきています。このため、もう少し企業が社会人の学び直しに対して、理解を示してくれるようになればいいなと思います。
読者メッセージ
日本女子大学のリカレント教育課程の受講を検討されている方や、社会人の学び直しに対して、興味・感心を持たれている方が本記事を読まれていると思います。最後に読者の方に向けて、メッセージをお願いします。
学ぶことの大切さは、今自分に欠けているモノが何か、今後何が必要かということに気が付いて、さらに今後は何をやっていったらいいのか、人生100年時代、より充実した人生を送れるのかということにも繋がるのかなと思います。
日本女子大学リカレント教育課程は受講期間が1年間と長いので、1年学んだ方が良いのか、あるいは半年で良いのか、3ヶ月で良いのか、あるいはもっと短くて良いのか、または3年~4年、大学や大学院に行くのが良いのかなど、どのプログラムがより自分に合っているか、より学びたい内容が含まれているか、そういう点もよく考えていただいて検討されるのが大事だと思います。是非ご自身の希望に合ったプログラムを見つけて、チャレンジしてみてください。
インタビューを終えて
今回は日本女子大学で開講されている「リカレント教育課程」について、坂本清恵教授と、学校職員の茂木知子さんにインタビューのご協力をいただきました。前半の当記事では、主に坂本教授を中心に、プログラムの内容だけでなく、当プログラムに込めた想いなどについて掲載をさせていただきました。
日本女子大学「リカレント教育課程」は、坂本先生をはじめ、素晴らしい指導陣の先生方に出会えます。また職場や学生時代の仲間、子供の親同士の繋がりとも違う、同じ志を持つ仲間との出会いがきっと待っているはずです。
日本女子大学「リカレント教育課程」の受講を検討されている方は、是非一歩勇気を出して、入学前説明会にまずは参加をしてみて下さい。
坂本先生、茂木さん、インタビューへのご協力、誠にありがとうございました!
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記事後半:学校担当者インタビューはこちら
インタビュアー Kanako 大手企業からベンチャー企業まで3社を経験。退職を機に明治大学のスマートキャリアプログラムを受講し、学び直しの重要性を体感。その後、当サイトの企画・運営に携わる。 |
※授業風景や受講生の写真は学校よりご提供いただきました。
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