行政書士とはどのような資格?難易度や将来性、試験概要を解説

行政書士はいわゆる「士業」と呼ばれる法律系国家資格のひとつで、行政書士資格取得に興味がある方も多いのではないでしょうか?
しかし、このような疑問を持っている方もいると思います。

  • 需要や将来性がある資格なの?
  • 行政書士試験は難しいの?

そこで今回は、行政書士の需要や将来性、資格取得の難易度について説明していきます。

行政書士とは?


行政書士は「街の法律家」ともいわれ、身近な法律家として行政への申請書類の作成や、申請代行などの手続きを行う専門家です。
まず初めに、行政書士の主な業務内容や、行政書士資格取得者の主な活躍の場について、確認していきましょう。

行政書士の主な業務内容

行政書士の主な業務は、以下のような書類の作成と、作成した書類の官公署への申請の代行、書類作成に関する相談業務です。

官公署に提出する書類 飲食業・建築業等の許認可、帰化申請、外国人雇用の申請(就労ビザ)など
権利義務に関する書類 遺産分割協議書、各種契約書(売買、賃貸借等)・示談書・内容証明など
事実証明に関する書類 営業許可申請等に添付する各種図面、財務諸表、各種議事録など

特に官公署への申請は1万種類を超えると言われており、高い専門性が求められる業務です。

行政書士資格取得者の活躍の場とは

行政書士は、主に以下のような職場で活躍しています。

  • 独立開業
  • 行政書士事務所や法務事務所(弁護士以外の法律資格者事務所)で働く
  • 弁護士事務所や企業の法務部で働く

行政書士というと、自分で独立開業するというイメージが強いかもしれません。
しかし、別の事務所に雇用されて使用人行政書士として働く方や、弁護士事務所のパラリーガル(法務事務員)や企業の法務部として勤務する方も多く、様々な場所で活躍が可能でしょう。

行政書士としての需要や将来性について

行政書士という資格は、独立開業や法務系職種への就職・転職が目指せる法律系資格のひとつです。
ここからは、行政書士に合格した場合の、仕事の需要や将来性について解説していきます。

行政書士は、毎年4,000人以上が合格している資格であることや、官公署への申請の電子化による業務の簡素化などにより、競争は激化していると言われています。しかし行政書士への需要は年々拡大しており、将来性のある仕事と言えます。その理由は以下の通りです。

申請が複雑化、多様化している

近年では今まで存在しなかった事業や商品が次々に開発されて、それらに関連する許認可や申請が増えています。以前の行政書士業務は7千種類程度でしたが、今では1万種類以上となっています。
自動運転やAI、宇宙関連など、新しい事業が次々と生まれていることは皆さんも実感されていることでしょう。この傾向はますます加速すると考えられますので、行政書士の業務も多様化していくことは間違いありません。
ベテランの行政書士が詳しくない新しい分野に精通することで、安定して顧客が得られるようになるのではないでしょうか。

法改正による業務拡大

2014年の行政書士法の改正により、「特定行政書士」という資格が追加されました。これにより「不服申立てに係る手続」が、行政書士にもできるようになりました。

不服申立ては、例えば飲食店の営業許可申請を提出して不許可となった場合などに、不許可の見直しを求める手続きのことです。
もともと不服申立ては弁護士しかできませんでしたが、法改正により行政書士に新たな職域が拡がったのです。

特定弁護士になるには、行政書士試験合格後に、日本行政書士会連合会が実施する「特定行政書士法定研修」の課程を修了し、考査において基準点に到達する必要があります。まだ新しい制度なので、これから独立開業する場合には差別化できるチャンスになります。

今後も増えそうな業務がある

これから増えそうな業務のひとつに、ADR(裁判外紛争解決)があります。

ADRとは…?
ADRとは裁判によらない紛争解決方法の事で、一般に「調停」や「あっせん」と呼ばれるものです。
比較的手続が簡単で、裁判のように多額の費用が掛からないため、不動産、相続、消費者トラブルなど多岐にわたる事案で利用されるようになってきています。

行政書士会では、行政書士ADRセンターというADR法に基づく調停手続きを行う機関を開設しています。そこでは専門トレーニングを受けた行政書士が、調停人として活躍しています。
ADRの件数は今後も増加すると考えられますので、行政書士の活躍分野もさらに広がるのではないでしょうか。

法務系職種の需要や将来性について


行政書士の資格を取って、法律事務所や企業への就職・転職の足掛かりにしたいという方も多いと思います。それでは、法務系職種の需要や将来性はどうなのでしょうか?

法律事務所のパラリーガル(法務事務員)

パラリーガルは法律事務所で、資料探しや法律関係書類作成などの弁護士の補助業務を行う仕事です。規模の小さい事務所では、来客対応などの一般事務やスケジュール調整などの秘書業務も兼任します。
熟練のパラリーガルになると、弁護士よりも法務事務の手続き方法や必要書類に詳しいことが多くあります。

近年では日弁連による「事務職員能力認定制度」ができて、認定試験に合格すると合格者名簿に記載されるようになりました。このように、スキルを備えたパラリーガルの需要は高まってきています。
2019年度の統計によると、日本全国に法律事務所は18,023件あり、また毎年増加傾向です。小さい事務所でも事務員がいることが多いですので、法律事務所で働きたい方にはチャンスが多いと言えます。

企業の法務

企業の法務といってもかなり広い業務分野があり、企業によっては法務という名称以外の部署が行っている業務もあります。主な業務分野は以下の通りです。

①契約法務

取引における契約文書の作成や確認を担当する業務で、最も多い法務の仕事です。

②機関・組織法務

株主総会や取締役会などの、会社の重要な機関運営の業務です。子会社設立やM&A手続きなどにも関わることもあります。

③コンプライアンス

コンプライアンスの研修や相談窓口、社内規定の整備などの業務です。総務や別の専門部署が担当する場合もあります。

④紛争対応

取引先や顧客からのクレーム対応や、そこから発展する訴訟手続きなどを行う業務です。

⑤知的財産

商標権や特許権などの知的財産権の調査、登録、管理などを行う業務です。法務とは別の専門部署がある場合もあります。

コンプライアンス意識の高まり、新たなビジネスモデルが多く生まれてきていること、経営統合やM&Aの増加などにより、幅広い分野で法務職の需要は増加してきています。
以前は上場企業などの大会社にしか法務はありませんでしたが、近年ではベンチャーやスタートアップまで、法務部門を強化し始めています。

法務経験者へのニーズが高いことは当然ですが、未経験でも一定の法律知識がある人であれば採用につながることも多くなってきています。
行政書士は法律知識があることの証明になる資格ですので、資格取得すれば法務への就職・転職が有利に進められるでしょう。

行政書士の試験内容や難易度


続いて、行政書士資格の試験内容や難易度について、説明していきます。

受験資格

行政書士試験は、年齢・学歴・国籍等に関係なく、どなたでも受験できます。

試験概要

試験スケジュール 出願:8月
試験日:毎年1回、11月の第2日曜日
発表:1月
試験科目と内容等
  • 行政書士の業務に関し必要な法令等(出題数46題)
  • 民法、行政法、憲法、商法、基礎法学の5科目で、択一式と記述式

  • 行政書士の業務に関連する一般知識等(出題数14題)
  • 政治・経済・社会、情報通信・個人情報保護、文章理解の3科目で、択一式

試験地 各都道府県の主要都市
受験費用 7,000円

行政書士試験の難易度

行政書士試験の合格基準に達するには、以下のすべてを満たす必要があります。

  • ①法令等科目の得点が、満点の50%
  • ②一般知識等科目の得点が、満点の40%以上
  • ③試験全体の得点が、満点の60%以上

①②を満たしていても、総得点では34点不足していることになりますので、対策の立てやすい法令等科目の得点を伸ばすことが合格に繋がります。
法律家になるための試験ですので、法律の初学者は質問などがしやすいスクール等で学習することが、合格への近道になると言えます。

行政書士の試験内容や難易度、合格率についての詳細は、こちらの記事にまとめておりますので、是非あわせてお読みください。

おすすめの行政書士講座とは?

それでは、行政書士を目指す方にオススメの講座をご紹介します。
まずは、無料の資料請求や説明会に参加してみてはいかがでしょうか。

また、今回ご紹介する講座は全て一般教育訓練給付金の対象です。
この制度を利用すれば、各講座の修了後、受講に関して支払った費用の20%(最大10万円)が国から支給されます。

教育訓練給付金の詳細については、こちらの記事に詳細をまとめていますので、ぜひお読みください。

ユーキャン

通信教育で有名なユーキャンですが、法律・ビジネス系の資格講座も数多くあります。
ユーキャンの行政書士講座は教育訓練給付金の対象である上に、他のスクールの講座と比べるとかなり費用が安く抑えられています。あまり費用はかけたくない方や、学習経験者にもオススメです。

教育訓練給付金対象講座

各講座の修了後、受講に関して支払った費用の20%(最大10万円)が国から支給される、「教育訓練給付金」対象講座は下記講座です。

講座名 期間 費用
行政書士合格指導講座 6か月 63,000円

対象講座の合格率

平成30年度に受験した受講修了者の合格率は17%で、教育訓練給付金対象講座の中では平均的といえます。
受験率(受講修了者のうちの受験者の割合)は45.5%で、独学に近い状況で継続が難しい通信講座でも、約半数の方がきちんと受験されているので、学習を続けやすいサポート体制があると言えます。

おすすめポイント

一番のおすすめポイントは、やはり費用が安いということです。
ユーキャンはただ安いわけではなく、デジタルテキストや音声ガイドなど、スキマ時間での効率的な学習や、分かりやすく学習できる工夫がされています。
また疑問点がある場合でも、メールで気軽に質問することが可能で、約50人の講師陣から適切なアドバイスを得ることもできます。
試験や法改正などの最新情報は、会報誌などで配信されているので、安心して学習に集中できます。

ユーキャンの
公式サイトを見てみる

LEC東京リーガルマインド

LECの行政書士講座は、受講生の実力に合わせたタイプ別に、初学者向け、経験者向け、短期集中などの多彩なカリキュラムが用意されています。受講形式も通学やe-ラーニングなど様々で、ライフスタイルに合わせて効率的に勉強できます。
地方でも主要都市に本校や提携校があるので、通学希望の方には特にオススメです。

教育訓練給付金対象講座

各講座の修了後、受講に関して支払った費用の20%(最大10万円)が国から支給される、「教育訓練給付金」対象講座は下記講座です。

講座名 期間 費用
行政書士パーフェクトコース(DVD) 12か月 247,500円
行政書士パーフェクトコース(Web+音声DL) 12か月 227,130円
行政書士パーフェクトコース通学+(Web+音声DL) 12か月 227,130円

対象講座の合格率

平成30年度に受験した受講修了者の合格率は42.9%~47%で、平均よりもかなり高めです。
しかし、受験率(受講修了者のうちの受験者の割合)が43.8%~58.3%とやや低いので、LECのカリキュラムについていけなかった方が離脱している可能性があります。
最後までカリキュラムをこなすことができれば、高確率で合格できる講座といえます。

おすすめポイント

LECのおすすめポイントは、効率的な学習ができる様々なツールが用意されているところです。
LECの受講生専用サイトでは、学習スケジュールの管理やチューターへの質問ができる上に、受講生同士が気軽に相談できる機能があり、効率的なだけでなくモチベーションを継続する工夫もされています。
また、通音声ダウンロードができるコースもあるので、通勤中や家事をしながらなどのスキマ時間にも学習が可能です。
通信、e-ラーニング講座でも、答練や模試は全国の主要都市にある本校で受験できるので、試験の雰囲気に慣れることができます。

LEC東京リーガルマインドの
公式サイトを見てみる

伊藤塾

伊藤塾の行政書士講座は、初学者がじっくり学べる本科生、初学者でも短期間合格を目指す速修生、経験者向けの中級・上級コースなど、受講生の状況と実力に合わせたカリキュラムが用意されています。
法律知識ゼロだけれど、短期間で合格したい方や、基礎からしっかり勉強したい方にオススメです。

教育訓練給付金対象講座

各講座の修了後、受講に関して支払った費用の20%(最大10万円)が国から支給される、「教育訓練給付金」対象講座は下記講座です。

講座名 期間 費用
行政書士合格講座速修生WEB(通信)クラス 7か月 185,000円
行政書士合格講座速修生教室(通学)WEB付クラス 7か月 195,000円
行政書士合格講座本科生WEB(通信)クラス 12か月 258,000円
行政書士合格講座本科生教室(通学)WEB付クラス 12か月 278,000円

※費用には入学金10,000円を含んでいます。

対象講座の合格率

平成30年度に受験した受講修了者の合格率は15.4%~25%で、平均程度~やや高めの確率です。
伊藤塾の特筆すべき点は、受験率(受講修了者のうちの受験者の割合)が77.6%~93.0%とかなり高いことです。最後まで学習が続けられるような、しっかりしたサポート体制があることが分かります。
受験率・合格率ともに一番高いのは、「行政書士合格講座速修生WEB(通信)クラス」ですので、コースを選ぶときは参考にしてください。

おすすめポイント

伊藤塾のおすすめポイントは、安心して受講を継続できるフォロー体制が整っていることです。
伊藤塾では、受講生専用サイトによる学習スケジュール管理や疑問点の質問だけではなく、講師によるカウンセリングを行っています。
学習を進めていくと何かと疑問や不安を感じるものですが、それらを直接講師に相談できるので、適切な方法で悩みを解消できます。
さらに特徴的なフォローは、パーソナルトレーナー制度です。担当のパーソナルトレーナーが、定期的にメールで学習進捗を確認し、必要に応じて学習のやり方や進捗の軌道修正をしてもらえます。
思うように成績が伸びないときでも、経験豊富なパーソナルトレーナーに相談することで、安心して本試験まで学習を継続することが可能です。

伊藤塾の
公式サイトを見てみる

まとめ


ビジネスの多様化や国際化により、行政書士の業務は増加傾向にあります。また、企業の法務などの管理系部門に就職・転職を目指す方にとっても有利な資格です。
是非一度、スクールへの資料請求や、無料説明会などに足を運んでみてはいかがでしょうか。

この記事を書いた人

Natsuko

夫の転勤をきっかけに仕事を退職し専業主婦に。その後、明治大学のスマートキャリアプログラムを受講し、社会人の学び直しの重要性を身を持って感じる。現在は当サイトの企画運営・インタビュー活動をはじめ、WEBライターとしても活動中。

  1. ファイナンシャルプランナー(FP)になるには?資格取得までの費用や合格率を解説

  2. 宅建とはどのような資格?難易度や将来性、試験概要を解説

  3. 行政書士になるには?資格取得までの費用や合格率を解説

  4. ファイナンシャルプランナー(FP)とはどのような資格?難易度や将来性、試験概要を解説

  5. 宅建とは?宅地建物取引士の資格取得までの費用や合格率を解説

  6. キャリアコンサルタントに需要や将来性はある?資格取得の難易度も解説